カルラの日々徒然

気がつけばマイナー好きになっていた

ダンス公演「岩下徹(ダンス)×梅津和時(サックス)即興セッション」

地元のホールで、岩下さんのダンスがあると知って
これは是非ともと、前から思っていた。
家族、特にダンナには心配かけて趣味のバイクも控えているのに
自分の好きな事をさせて欲しいと言うのは気が引けて
今日はムリかもと思っていた。

でも、ダンナもお姑さんも快く承知してくれた。
我が儘ばかりで申し訳ないと同時に感謝しています。
去年の「動物の演劇」以来、岩下さんのダンスに非常に
興味を持っていたので、開催してくれたラブリーにも感謝です。


で、肝心の感想など。

舞台は二部構成となっており、テーマなどが特にあるわけでも
なかったものだったので、純粋に観る前からわくわくしていた。
ジャシーさんも一緒だったので、始まる前までは(やっぱり)
リーダーの話などでわやわやしゃべりまくっていた(笑)。
話題に困らない人ですね、リーダーは。

起承転結のようなストーリー性のない音楽とダンス。
始まりは場内のアナウンスだけがたより。
ここからは全て仮定ではなく、私の主観で断言して書きます。

サックスの音とダンス、どちらが先に始まったのか曖昧な
幕開けでスタートした。
音楽は時に優しく、時に激しく、そして時にはダンスのステップ音のみ。
最初は太極拳のようなゆっくりした動きから始まった。
それから東洋の舞踏をランダムに組み合わせたような神秘的な
ダンスの連続。
私には仏教、特に阿修羅をイメージさせる動きが多く思えた。
闘的な神のダンス。
それなのに、岩下さんの表情は優しさ、真摯さ、ひょうきんさを
垣間見せながら挑んでいるように見えた。
ある観客を凝視し、視線を飛ばし、自分からはね返される。
闘いが終わった時、10分間の休憩が入った。

そんな風に見えているのに笑ったりうっとりしたりする自分がいる。
不思議な空間。ただ観ているだけなのにすでに汗ばんでいた。

そして二部は梅津さんの竹サックス(ご友人の自作だそうだ)で
幕を開ける。実際には幕などないんだけどね。
岩下さんは本来の客席端の下から、音色に導かれるように現れた。
舞台下を「ダン!ダン!」と時折音を立てながら、舞台に近づいてくる。
顔と腕が見え隠れし、おそるおそる舞台に上がってくる。
まるで、アメノウズメノミコトが天の岩戸を開けるまでの間に
思えて仕方がなかった。(神様の名前が違っていたらすみません)

それからの動きは動物の本能を思わせる動作のような
激しくて奔放なものが展開されていく。
中盤辺りになると、客席のある女性に近づいていき、彼女を
舞台へと導く。
すると彼女はその前からしなやかで優雅な手つきを見せながら、
自分から舞台へと誘われていた。
その所作があまりにも自然で、テンポもダンススタイルも
岩下さんのそれと見事に一致しており、もう感嘆するしかないほど。
後のトークショーで、彼女は岩下さんのワークショップに参加していて
天才的だと評されていた。
岩下さんが彼女を再び客席に導こうとするも、彼女は踊り続け、
最後は彼女のダンスで幕となった。(笑)

記すのが後になったけど、この舞台は、客席を舞台上に設置して、
三方から舞台を見下ろすようにできていた。
京都芸術センターのフリースペースをご存じの方なら
イメージがしやすいだろうと思う。
ちょうどあんな感じで催された。
だから、観客は観客席を観ながら、舞台を観ていた。
そのスペースを梅津さんがサックスを吹きながら
縦横無尽に歩き回る場面もあった。
照明によって浮き彫りにされる陰影の濃淡も素晴らしく、
私にとってはこの上ない美しさを醸しだしていた。

ジャシーさんは、岩下さんの頭髪がないのは、きっと
ダンスに邪魔なものだからでは、と言っていた。
私にはそういう発想がなかったので新鮮に聞こえた言葉だった。
逆に、頭髪もダンスの要素になるのだろうとも言えるのか。
そんな話を、休憩の間にしていた。

身体のどの部分も使えないところはないんだと
岩下さんのダンスは教えてくれる。
もちろん他の優れたダンサーの方々もそうであると思うが、
私は岩下さんのダンスと共に表される表情が非常に好きなのだ。
だから、演劇との関係を考えてしまうし、その表現力の無限にも
踏み入れて、素人ながら考察したくなる。

アフタートークで、路上と劇場の違いを質問されたKさん。
路上のそれは、やはり限られた空間に発しやすい磁場は
発生しにくいとの話。
ジャシーさんの、即興なら何故リハーサルを行うのか、の質問も
興味深い答えが返ってきた。
梅津さん曰く、一つは音の広がりを確認するため。
もう一つは軽く感じを掴むためだそうだ。
それが、今回、リハ段階で非常にノッてしまい、
本番の即興で、その成功を払拭しきれなかったことが
惜しいと仰っていた。いい出来をなぞってしまうという話だった。

最後に舞台を去る時に、岩下さんが私達にお礼の声をかけて
下さった。私は言いたい感想が山ほどあったけれど、
感謝の言葉しか返せなかった。
次回も機会があれば、また観に行きたいと思う。
本当に胸がスッとする舞台に出会えたと思った。

帰りはジャシーさんとKさんと3人で少しお茶をした。
舞台に対する感想や考察、ジャシーさんやKさんが次回
出演されるというラブリーの大人向け音楽祭の話。
話題はつきないけれど、またゆっくり話したいですね。

リーダーはこの舞台、どうしても来られないと
ジャシーさんから聞いてたので、返ってから思い切り長い
メールを送った。(笑)
迷惑メールじゃないですからね。念のため(^_^;。

来月にも観たいダンス公演がある。
こちらも企画自体が面白そうなものなので楽しみなんだけど、
残さんのダンスって、観たことないんだよなぁ。
これも機会があれば、是非踊っている残さんをみたいと思う。

非常に有意義な一日でした。